データを記録するために、HDDを利用するケースは多いでしょう。しかし、1台のHDDでは衝撃や経年劣化などでHDDに障害が発生した場合、大切なデータを取り出せなくなってしまう可能性があります。このようなトラブルを回避するために欠かせない技術が「RAID」です。
この記事では、RAIDとは何か、種類やそれぞれの特徴、導入するメリット、使用する際の注意点について詳しく紹介します。自身や自社の運用に最適なRAIDを選んで、データを確実に守りたい方はぜひ参考にしてみてください。
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そもそもRAIDとはどういったもの?
「RAID(レイド)」とは、「Redundant Arrays of Inexpensive Disks」の略で、複数のHDD(ハードディスク)を組み合わせて、1台の仮想的なドライブとして認識・表示させる技術を指します。そのため、RAIDを運用することで、HDD1台の運用よりもシステム全体が壊れにくくなり、安全性が向上します。そのほか、データ保存の高速化や大容量化を実現できるメリットもあります。ただし、どのRAIDも安全性・高速性を兼ね備えているわけではなく、種類によって特徴やメリット・デメリットが異なります。
一般的に使用されているのは5種類
RAIDの種類はレベルとしてRAID0〜6までの7種類が存在しているのですが、一般的に使用されているのはRAID0・1・5・6・10の5種類となっています。これらの種類はそれぞれで必要となるHDDの台数が異なりますし、機能性にも大きな違いがあります。
また、基本的には耐障害性に優れている装置ですが、レベルによって障害への強さにも差があるようです。さらに、レベルごとに最低限必要なディスクの台数も異なるため、場合によってはコストが高くなることもあります。
RAIDのレベルによって機能性が異なる
各レベルによって機能性が異なるため、効果的に利用するのであれば目的に合ったものを選ぶ必要があります。また、多くの方は「レベル=グレード」という考え方をしている傾向がありますが、レベルが高いから高性能というわけではありません。
レベルはそれぞれで実現させるシステムの方式となっていて、Raid 6や10を使用するからといって満足できる機能を使用できるわけではないのです。そのため、導入する際はまずレベルごとの違いについて把握しておくことが大切でしょう。
さらに、一般的なHDDに比べて複数のディスクを必要とする装置なので、目的によっては導入コストが高くなります。つまり、必要なRaidを選ばなければムダな費用を使ってしまう可能性があるので、必要最低限のコストに抑えるためにもレベルごとの違いは知っておくべき情報だといえるでしょう。
代表的なRAIDの種類ごとのメリット・デメリット早見表
RAIDの種類(レベル)に応じて、データの安全性・アクセス速度・保存容量などが変わります。それぞれのメリット・デメリットは、以下のとおりです。
RAIDの種類 | HDDの必要台数 | メリット | デメリット |
RAID0(ストライピング) | 2台以上 | アクセス速度が速い | HDD1台壊れたら、復旧不可能 |
RAID1(ミラーリング) | 2台 | HDD1台壊れても、復旧可能 | アクセス速度が遅い保存容量が少ない |
RAID1+0(RAID10) | 4台以上 | アクセス速度が速いHDD2台壊れても、復旧可能 | 保存容量が少ない |
RAID5 | 3台以上 | HDD1台壊れても、復旧可能安全性・高速性のバランスに優れている保存容量の利用効率が高い | HDD2台以上壊れたら、復旧不可能 |
RAID6 | 4台以上 | HDD2台壊れても、復旧可能 | RAID5に比べ、保存容量が少ない |
RAIDの種類と特徴
上述でRAIDにはいくつかの種類があることに触れましたが、7種類あるうちの「RAID2・RAID3・RAID4」の3つに関しては、メリット・デメリットの観点から実用性に欠けるなどの理由で、実質的には使われていない種類になります。使われていない理由も含めて、ここからは、それぞれの種類と特徴を詳しく解説していきます。
RAID0(ストライピング)
「RAID0」は、データをブロック単位で分けて、2台以上のHDDに対して分散して記録する方法です。データが並列に配置されることから、「ストライピング」ともいいます。データの読み書きが高速で行え、HDD容量を最大限利用できます。
ただし、内蔵のHDDが1台でも壊れてしまうと、データ復旧・アクセスが困難になります。RAID0は優れた高速性を持つ一方で、安全性が低いため、現在ほとんど使われていません。その代わり、RAID0などと組み合わせて使われるケースが多くなっています。
RAID1(ミラーリング)
「RAID1」は、2台のHDDに同一データを保存する方法で、データを複製することから「ミラーリング」ともいいます。HDD2台1組のペアで運用するため、2台以上のHDDが必要で、データを二重化する分、HDDの保存容量が少なくなります。
ただし、片方のHDDが壊れてもペアのHDDでデータを継続して利用できるので、データの安全性は向上します。RAID1は、更新頻度が高くないデータを守りたいときの利用に向いています。
RAID2
「RAID2」では、エラー修正符号に「ハミングコード」という冗長コードを使い、データはバイトやビット単位で区切り、複数の専用HDDに保存します。安全性が高い方法ですが、HDDが最小で計5台(データ用2台+エラー修正用3台)必要になります。
また、RAID2の方法は復旧にかかる処理が膨大になるため、動作が遅く、利用効率が低いというマイナス面があります。さらに、必要になるHDD台数が多い分、導入コストがかかる場合もあります。こうした理由からRAID2は、ほかのRAIDに比べると性能が劣り、実用性がない種類になっています。
RAID0+1
「RAID0+1(RAID01)」は、高速性を重視したRAID0と高い安全性を持つRAID1の2つを組み合わせた方法です。分散書き込み(ストライピング)したグループを、同時にほかのペアのHDDに記録する(ミラーリング)特徴があります。運用には4台以上のHDDが必要になります。RAID0+1は特定のHDDが壊れてしまうと、データが消失するデメリットがあるため、現在ほとんど使用されていません。
RAID1+0
上述したRAID0+1と同じく、RAID0とRAID1を使った方法が「RAID1+0(RAID10)」です。RAID1+0は、ペアのHDDに同時記録(ミラーリング)をしたグループを、分散書き込み(ストライピング)して、最低4台のHDDにわたって記録する方法になります。
一見、RAID0+1と同じに見えますが、RAID0+1が「ストライピングを実施した範囲をミラーリング」という構成になるのに対して、RAID1+0は「ミラーリングを実施した範囲をストライピング」という構成になる違いがあり、RAID0とRAID1のどちらを下層で実施するかによって名称が変わります。また、RAID1+0は2台までなら故障に対応できるので、安全性はRAID0+1よりもRAID1+0のほうが優れているといえます。
RAID3
「RAID3」はエラー修正符号に、上述で触れたRAID2に使われているハミングコードを、「パリティ」に置き換えることで負荷を軽減させた方法です。RAID2の場合、HDDが最低計5台必要ですが、RAID3ならエラー修正用の1台を含めても計3台から運用できます。
ただし、RAID5などよりもアクセス速度が遅く、運用するメリットがあまりないため、現在では利用される機会のない方法になっています。
RAID4
「RAID4」には、基本的に上述のRAID3と同様の方法が使われていますが、RAID3のようにデータの分割はバイトやビット単位を使うのではなく、ブロック単位を用いる点が異なります。これにより、RAID3に比べてデータの高速化が実現されています。
ただし、現在はRAID4の利点を引き継ぎながら、より性能が向上したRAID5が普及しているため、RAID4は一般的には利用されていません。
RAID5
RAID1などと同じく、最もよく使用される方法の1つが「RAID5」です。データの分割やパリティ生成方法はRAID4と同一ですが、パリティを交互に分散させて格納する点が異なります。パリティ生成には負荷がかかるため、RAID0やRAID1と比較すると読み書きの速度は遅くなりますが、HDDを増やせば速度を向上させることが可能です。
また、RAID5は最低3台のHDDで運用されます。HDDが2台以上壊れるとデータが取り出せなくなりますが、1台の故障であれば、残りのパリティ情報を使ってデータ復旧ができます。RAID5は、データの安全性・高速性のバランスに優れ、容量の利用効率の向上につながる方法になります。
RAID6
「RAID6」は、基本的には上述のRAID5と同じ技術になりますが、さらに複製したパリティを異なるHDDに分散させ、データの安全性を大幅に高めた方法になります。また、RAID6はパリティを複製する分、RAID5に比べHDDの容量消費量が増えるので、4台以上のHDDが必要になります。導入コストが高くなる場合があるものの、万が一最大2台のHDDが壊れた場合でも、複製しているパリティを使ってデータ復旧できる強みがあります。
JBOD(スパニング)
「JBOD (ジェイボド)」とは、「Just a Bunch Of Disks(単なるディスクの束)」の略で、大容量確保を目的としたディスクアレイ形態になります。複数のHDDを束ねて1台の大容量ドライブのように扱う技術で、「スパニング」とも呼ばれます。JBODに内蔵されたHDDはそれぞれ独立していて、個別にアクセスできる特徴があります。
また、優先すべき性能として、上述で触れたRAID0がデータの高速性を優先するのに比べ、JBODが優先するのは、高速性よりもHDD容量の効率性になります。
RAIDを導入するメリット
ここからは、RAIDを導入するメリットについて紹介します。主に3つ挙げられますので、確認しておきましょう。
HDDが壊れてもデータを復旧できる
RAIDの種類にもよりますが、万が一、HDDが壊れてもデータを復旧できるのがRAIDのメリットになります。例えば、RAID6であれば、二重に作成したパリティをHDDに分散させて保存するため、HDDが同時に2台故障してしまっても復旧できます。
データの書き込み速度が速くなる
RAID1以外は複数のHDDを使ってデータを分散して保存する方法になるため、データの書き込み速度が向上するメリットがあります。データの高速性を高めたい場合は、RAIDの活用をおすすめします。
冗長性が高くなる
RAIDを運用することで、バックアップやシステムの安全性・信頼性が増して冗長性を高められるメリットがあります。システム障害や故障が発生した場合でも、データを失うリスクを抑えられます。
RAIDを使用する際の注意点
種類やレベルごとの違いについておわかりいただけた方の中には、導入してみようと考えている方もいるでしょう。しかし、安全に使用するためにはこれからご紹介する4つの項目に注意が必要です。
・強制終了を行うと故障の原因になる
・安易にリビルドを行うのは危険
・何らかの障害が発生した場合は不用意に操作しないこと
・データのバックアップに使用する装置ではない
強制終了やリビルド、障害が発生しているときに安易な操作は、いくら安全にデータを保存できるとはいえ、完全に故障してしまう原因になるので注意が必要です。また、データのバックアップを取るものだと勘違いしている方が多いようですが、それは大きな間違いです。
もしかすると複数台のディスクが同時に故障することもありますし、種類によっては冗長性のないものもあるので、データのバックアップは別の記憶装置で取っておくことをおすすめします。
まとめ
RAIDとは複数のHDDを組み合わせて、1台の仮想的なドライブとして運用し、システム全体を壊れにくくする技術のことです。RAIDの導入によって、HDDが壊れた場合でもデータの復旧が可能になり、安全性を高められます。また、データの高速化・大容量化も可能になります。ただし、RAIDにはいくつかのレベルの種類があり、データの安全性やアクセス速度、保存容量、導入コストなどが異なりますので、自身や自社の運用に最適なRAIDの種類を選ぶことが大切です。また、万が一RAIDが故障した場合は、大切なデータを失わないように、信頼できるデータ復旧業者に任せるようにしましょう。